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不織布マスクと布マスクの使い分けるポイント

2021年06月15日

新型コロナウィルスにより、毎日のマスクの着用が当たり前になりました。
これから暑い季節になると、不織布マスクは「息苦しい」「暑い」など不快に感じる方も多いかもしれません。
しかし、不織布マスク、布マスク、ウレタンマスクなどいろいろな種類があって「どれを選択すればよいのかわからない」から見た目で付けている方も多いと思います。
そこで、今回は意外と知らないマスクの種類と効果、場所や季節ごとに使い分けるポイントについてお伝えしていこうと思います。

マスクでできること

まずはマスクにできることを確認しておきましょう

  • 「咳やくしゃみなどで飛散するウィルスなどを含む飛沫を抑える」
  • マスクのこの効果が、今回の新型コロナウィルス感染症では評価されました。咳やくしゃみで飛ぶ「飛沫」というのは、直径5μm以上の大きさの粒子を指しています。

  • 「咳やくしゃみなどで飛散する、ウィルスなどを含む飛沫から防護する」
  • 咳やくしゃみなどの飛沫は平均2m程度飛散すると言われています。またマスクをすることで発生源から飛沫が飛んできたとしても、着けたマスクでブロックすることができます。

  • 「鼻やのどの乾燥を防ぐ」
  • ウィルスを吸い込むこと=感染、ではありません。免疫がウィルスの増殖を抑えることができなかった場合に、発症します。のどやウィルスの乾燥を防ぐことで免疫が働きやすくなり、ウイルスなどが増殖しにくくなります。ウィルス吸い込んでしまったとしても、マスクをすることで感染を抑えやすくなるのです。

  • 「ウィルスなどが付着した手で鼻や口を直接触らない」
  • くしゃみ等で飛び出す飛沫以外に、ドアノブやエレベーターのボタンなど、人が手でよく触る場所を介してウィルスが人から人へ移動するからです。しかし、手にウィルスなどがついたとしても、その手で鼻や口、目などの粘膜を触らなければ発症しません

    マスクの種類と効果

    つぎにマスクの種類と効果について確認しましょう。
    デューク大学の研究グループは、素材によって飛沫を捉える機能に差があるかを検討し結果を発表しました。

    Science Advances 2020:eabd3083.

    この研究は、暗い箱の中にレーザービームを当てながら、各素材のマスクをしたうえで、“Stay healthy, people(みなさん健やかに)”と話しかけ、箱の中に飛び散った飛沫をスマホのカメラで記録しコンピュータでカウントしたものです。

    研究内容はいろいろ複雑なので、早速結果です。
    やっぱりベストはサージカルマスク(不織布マスク)です。
    続いて布マスクですが、感染症対策として使うならポリコットンマスクが良いでしょう。
    ニット、バンダナは効果が低いため避けましょう。
    フリースネックはしないより悪い?どういうこと?と思いますが、寒いときでもきちんとマスクにしないと全く効果がないようです。
    意外な結果もありましたが、サージカルマスク以外をする場合はシンプルに布マスクが良いということになると思います。
    会話程度であれば、布マスクも十分効果があると言えそうです。

    シミュレーション結果に関するニュース記事

    2020年12月に、国立研究開発法人「理化学研究所」が発表した、スーパーコンピューター「富嶽」による、マスク素材ごとの飛沫防止効果のシミュレーション結果が話題を呼びました。
    それによると、自分が他人にうつしてしまう「吐き出し飛沫量」は、不織布マスクでは約80%カット、である一方でウレタンマスクでは約50%しかありませんでした。
    不織布マスク、布マスク、ウレタンマスク、フェイスシールド、マウスガードの比較でも不織布マスクと布マスクが比較的良い結果ですので、場所によってうまく使い分けると良さそうです。

    マスクは場所や体調によって使い分け

    続いては、マスクの使い分けについてです。
    自分の体調、使う場所、使う時期などに合わせて使うことをお勧めします。

    1.体調の悪いときは、不織布マスクを付けよう

    体調の悪いときは、新型コロナウィルスだけでなく、インフルエンザやその他の感染症にかかっている可能性も否定できません。大切な家族や周りの人たちに移さないようにすることが重要です。

    Prather KA, et al. Reducing transmission of SARS-CoV-2. Science 2020.より引用


    上記からもわかるように、一番感染しないのはお互いがマスクをすることですが、感染者がマスクをすることが一番大事です。咳で発生する飛沫の量と会話で発生する飛沫の量は大きくは変わらないとする研究もあります1)。明らかに体調の悪いときは家の中でもマスクをしましょう。

    1)Journal of Aerosol ScienceVolume 40, Issue 2, February 2009, Pages 122-133

    2.場所によっては布マスクやウレタンマスクでもOK!

    医療機関に行く場合や、人込みが多い買い物や満員電車などはできるだけ不織布マスクが良いでしょう。
    しかし、不織布マスクに限りがある場合は『いざ』という時に取っておきたいですよね。
    換気がしっかりされていて、個人の空間がパーテーションなどで区切られている場所では、呼吸が楽な布マスクを着ける、など状況に合わせてマスクを選んでいただければと思います。
    また、厚労省からの新しい生活様式リーフレットでは2m以上の距離があればマスクを外して、こまめに水分を取ることなどを推奨しています。
    外出先が外であるとき、明らかに2m以上の距離が取れると予想されるときは、マスクなしだと不安であれば、布マスクやウレタンマスクで十分だと考えられます。

    不織布マスク(サージカルマスク)は季節によって性能で使い分け

    市販されている不織布マスクで「フィルターが99%カット」や「99%カットフィルター」と記載されている商品を多く目にすると思いますが、「何を」カットしているのかも確認する必要があります。
    マスクのパッケージに性能を表すものとしてPFE・BFE・VFEがあります。

  • PFE(微粒子ろ過効率)
  • 試験粒子(0.1μm)が捕集(カット)された測定値
    インフルエンザウィルス、ウィルス単体、結核菌ウィルスなどが対象となります

  • BFE(細菌ろ過効率)
  • 細菌を含む粒子(約3μm)が捕集(カット)された測定値
    花粉や咳・くしゃみに伴う水分を含んだウィルスの飛沫などが対象となります。

  • VFE(ウイルスろ過効率)
  • ウイルスなどの飛沫(約0.1㎛~5.0㎛)が捕集(カット)された測定値
    インフルエンザウィルス、咳・くしゃみを伴う水分を含んだウィルスの飛沫などが対象となります。

    一般的にそれぞれの粒子の大きさは以下のようになっており、

    スギ花粉:30~40μm
    黄砂 :0.5~5μm
    PM2.5 :2.5μm以下
    ウィルス:0.1μm
    水分を含んだウィルス:1~3μm

    ウィルス性の感染予防にはVFEやPFEの数値がより高いものを、花粉の予防にはBFEの数値がより高いものを選択するようにしましょう。

    まとめ

    マスクの効果は主に

  • 「咳やくしゃみなどで飛散するウィルスなどを含む飛沫を抑える」
  • 「咳やくしゃみなどで飛散する、ウィルスなどを含む飛沫から防護する」
  • なので、人と同じ空間にいるときは、自分はウィルスを保有しているかもしれない、と思って正しくマスクを着けましょう。
    「体調の悪いとき」「医療機関に行くとき」「人ごみにいるとき」には不織布マスクを受けましょう。
    それ以外の時は、不織布マスクでなくてもよいでしょう。
    ウレタンマスクよりは布マスクを選んで付けるようにしましょう。

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