人間ドック・健診センター コラム

MENU
外来診療
画像診断センター
MENU

人間ドック・健診センター コラム

胃がんの原因の99%はピロリ菌感染

2019年07月30日

ピロリ菌とは

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃粘膜に生息しています。
胃粘膜は、強力な酸である胃酸に覆われているため、従来は、細菌も存在できないと考えられていました。
しかし、最近の研究により、胃の中でも存在できる、ピロリ菌という細菌がいることがわかりました。
日本人の場合、年齢が高い方ほどピロリ菌に感染している率が高く、60歳代以上の方の60%以上が感染しているといわれています。
また、ピロリ菌に感染しているだけでは、症状などは出ませんが、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎の患者さんはピロリ菌に感染している方が多く、ピロリ菌が胃や十二指腸の炎症やがんの発生に関わっていると考えられています。

ピロリ菌は1982年に発見され、その後、がんだけでなく胃潰瘍や十二指腸潰瘍にも関連することがわかりました。
今、日本人がかかっている胃がんの99%はピロリ菌感染によるものとされています。裏を返せば、ピロリ菌未感染の方が胃がんになるリスクは1%ということです。ピロリ菌感染のほとんどは幼少期までに起こります。免疫力のついた成人はほとんど感染しないと言われており、感染した場合は急性胃粘膜病変を起こすことはありますが、一過性感染で終わる可能性が高いとされています。
つまり、成人の場合は一度検査すれば、胃がんのリスクがわかるということです。
ピロリ菌抗体検査と胃の萎縮度合いを調べる「ABC検診」を受けましょう。

ピロリ菌の感染原因

ピロリ菌はどのような経路で、いつ人の胃に入り込むのでしょうか。
実はどのような感染経路であるかはまだはっきりわかっていません。
ただ、最近の研究から、口から入れば感染することは間違いないようです。
それでは、生水を飲んだり、キスでピロリ菌に感染してしまうのでしょうか?
上下水道の完備など生活環境が整備された現代日本では、生水を飲んでピロリ菌に感染することはないと考えられています。
また、大人になってからの日常生活・食生活ではピロリ菌の感染は起こらないと考えられます。
ピロリ菌は、ほとんどが乳幼児(5歳以下)に感染すると言われています。
幼児期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生きのびやすいためです。
そのため最近では母から子へなどの家庭内感染が疑われていますので、ピロリ菌に感染している大人から小さい子どもへの食べ物の口移しなどには注意が必要です。

ピロリ菌に感染していたら、内視鏡検査を行い必ず除菌を!

早期胃がんで内視鏡手術を受けたピロリ菌感染者505人を2グループに分類し、一方にピロリ菌の除菌をし、もう一方は除菌をしなかった研究では、除菌したグループで胃がん再発率を約3分の1に抑えられることがわかりました。また、除菌による胃がんの予防効果は胃炎の程度が軽いほど高く、若い人ほど高いということが分かっております。
また、上下水道が整備されている現代の日本でのピロリ感染は、おもに小児までの間に親から感染することが多いと考えられていますので、親のピロリ菌検査とピロリ菌除菌が大切です。
ピロリ菌感染が認められた場合は内視鏡検査で胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍があることを確認することで、保険診療で除菌治療を行うことが可能です。
当院では内視鏡検査時にピロリ菌感染が強く疑われるような胃炎や粘膜の萎縮がみられる場合には、その場でピロリ菌の検査を行っています。
ピロリ菌の検査を行うことにより、効果のある除菌薬を選択することが可能となります。
そのため、当院の除菌率は全国平均よりも高水準を保っています。

除菌後は未感染であっても定期的な内視鏡検査を

ピロリ菌が胃の粘膜にすみつくと、胃の粘膜に炎症を引き起こし慢性胃炎の状態となり、加齢とともに徐々に胃炎が進行していき、日本人の場合多くは胃の粘膜が萎縮する萎縮性胃炎という状態となります。
胃がんが発生するのは、ピロリ菌が感染して炎症をおこした胃粘膜からがほとんどであり、萎縮性胃炎が進行すると胃がん発生の危険性がより高まります。
ピロリ菌を除菌することで、胃の炎症が徐々に軽快し、萎縮性胃炎も改善する傾向があり、胃がんの発症が抑制できることが明らかにされています。
2013年から内視鏡検査でピロリ感染胃炎と診断されれば、保険診療で除菌できるようになり、ピロリ菌を除菌して胃がんを撲滅しよう!と言われるようになりました。
しかし、胃がんの主な原因がピロリ菌だから、ピロリ菌を除菌すればもう胃がんにはならいのでしょうか?
それは誤解です。
除菌で胃がん発生の危険性が下がることは確かですが、ゼロにはなりません。
さらに、ピロリ菌除菌前の胃炎の状態が進んでいるほど除菌後も胃がんのリスクはより高く残ります。
ピロリ菌がいなくなった時点で、すでに検査で発見できない極めて小さな潜在的ながんができてしまっていることなどがその原因と考えられています。

ピロリ菌の除菌治療を行っても、胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。
1年に一度の内視鏡検査で経過観察しましょう。
ピロリ菌未感染の方も食道がんやピロリ菌未感染の胃がんのチェックのために3年に一度は内視鏡検査を行うことをお勧めします。
また、別の病気で使用した抗生剤でたまたまピロリ菌が除菌される場合もありますので定期的な検査は重要です。

ページトップへもどる