自分に適した認知症検査の選び方 健診会 東京メディカルクリニック

MENU
外来診療
画像診断センター
MENU

認知症コラム Vol.4「自分に適した認知症検査の選び方」

認知症コラム Vol.4「自分に適した認知症検査の選び方」

~もの忘れに悩むあなたへ 自分に合った認知症検査を見つけよう!~

5人に1人が認知症になるといわれている社会。
「自分や家族が、認知症かもしれない」「将来、認知症にはなりたくない」と思ったときに、どのような検査を受ければ良いか気になる方も多いと思います。
今回のコラムでは、認知症の検査についてのご紹介だけでなく、認知症の検査を受ける際の注意点や、検査を早く受けることをおすすめする理由についても解説しています。
ぜひご参考にしてみてください。

認知症とは何か1)2)

定義と特徴

認知症とは、一度正常に発達した認知機能が次第に低下し、およそ6か月以上継続して日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を指します。脳が正常に働かなくなってしまうために、日常生活での思考や記憶が難しくなり、様々なことを忘れたり、判断が難しくなったりするため、日常生活のさまざまな場面で困難がもたらされます。

主な中核症状

記憶障害: 新しい出来事を記憶できなくなったり、覚えていたことも忘れるようになる。
言語障害: 話すこと、言葉の理解が難しくなる。
実行機能障害: 日常のタスクの順序や手順を忘れる。
見当識障害: 時間や場所、自分と他人との関係性(親子等)がわからなくなる。
理解・判断力の障害:物事の理解に時間を要したり、不要の物を買いすぎたりする。
失行:運動機能障害がないのに「お茶を入れる」、「服を着る」等の日常動作ができなくなる。
失認:身体の状態や自分と物との位置関係、目の前の物が何かを認識することが難しくなる。

主な中核症状

気分の変動: 怒りやすくなる、落ち込む、不安になる。
幻覚・妄想: ないものが見える、誤った信念を持つ。
行動の変化: 夜行動が活発になる、無目的に歩き回るなど。

主な中核症状

認知症の種類と原因

認知症の種類や症状によって、原因は多岐にわたります。

アルツハイマー型認知症: 認知症の原因として最も一般的な疾患であり、認知症全体の約70%を占めています。脳内の神経細胞同士の接続が失われることが特徴で、特定のタンパク質が蓄積することで、脳神経細胞が機能を失い脳が委縮していきます。

脳血管性認知症: 脳の血流が不足することで神経細胞が酸素や栄養を得られずに機能障害を起こすものです。脳卒中の後や、脳内の小さな血管の障害が原因となることが多いといわれます。

レビー小体型認知症:特定のタンパク質のかたまりであるレビー小体が脳内に異常に蓄積することで発症します。症状としては、パーキンソン病に似た運動の障害や幻覚が見られることが特徴的です。

前頭側頭型認知症: 脳の神経細胞の中にあるタウタンパク質などが発症に関与していると言われていますが原因の解明には至っていません。脳の前頭葉や側頭葉に異常な萎縮が見られる認知症です。性格や行動の変化が顕著に現れるのが特徴として挙げられます。

その他の原因: 甲状腺機能の障害、ビタミンB12欠乏症、梅毒、HIV感染など、多様な医学的状態や感染症が認知症の原因となることがあります。

また、認知症は多くの場合、加齢、遺伝、ライフスタイルや環境要因など複数の要因が組み合わさって発症すると考えられています。

日常の物忘れと認知症の違い

年をとれば誰でも、思い出したいことがすぐに思い出せなかったり、新しいことを覚えるのが困難になったりします。
「認知症」は、このような「加齢によるもの忘れ」とは違います。

日常の物忘れと認知症の違い

物忘れの例: 「夕飯で何を食べたか忘れる」
夕飯のメニューを一時的に思い出せない場合、それは日常的な物忘れの範疇に入ります。特に忙しい日や疲れているときなどには、誰もが経験することです。このような忘れ物は、少し時間を置くことで、あるいは何かのヒントを得ることで思い出すことが多いです。

認知症の兆しの例: 「夕飯を食べたことを忘れる」
一方、夕飯を食べたこと自体を忘れることは、ただの物忘れを超えた問題がある可能性を示唆しています。特にこのようなことが繰り返される場合、それは認知症の初期症状の一つである可能性が考えられます。

また物忘れと認知症の大きな違いは、その「深刻さ」や「頻度」、そして「日常生活への影響の度合い」です。物忘れは一時的で、日常生活に大きな支障は出ませんが、認知症はその影響が日常生活のさまざまな面に及び、忘れたことを思い出すのが難しくなってしまいます。

認知症の一歩手前の状態「MCI」

MCIとは、Mild Cognitive Impairment の略で軽度認知障害と呼ばれ、健常と認知症の中間の状態を指し、認知症予備軍といわれています。最近の研究では、MCIの段階で適切な予防や治療を行えば、認知症の発症を防ぐことや遅らせることができるとされています。また認知症は「脳の生活習慣病」といわれ、日々の生活習慣が認知症発症に影響を与えるといわれています。
認知症と軽度認知障害(MCI)についてのコラム記事もありますので、気になる方はチェックしてみてください。
https://www.dock-tokyo.jp/feature/sickness/other/dementia.html


軽度認知障害(MCI)ならまだ治る?認知症になる前の予防が大切

認知症は一度発症してしまうとなかなか元へは戻れないといわれています。
ですが、MCIであれば、健常に戻れる可能性があります。

「軽度認知障害(MCI)」の高齢者を4年間追跡調査したところ、14%が認知症に進んだ一方で46%は正常に40%が現状維持との結果を国立長寿医療研究センターの研究班がまとめた。MCIの段階から改善する例も多いことを示す結果となっています3)。

またアルツハイマー型認知症はアミロイドβといわれる毒性のタンパク質が脳内に蓄積するのが原因のひとつと提唱されています。
アミロイドβの蓄積は始まっているが、認知機能の低下などの顕著な症状が表れていない段階を “プレクリニカル期”といいます。アミロイドβは40代~50代の症状のないプレクリニカル期から蓄積し始め、アミロイドβが蓄積するとやがてMCIになり、認知症へ進んでいくと考えられています。つまり、アルツハイマー型認知症はプレクリニカル期からの早期介入により予防することが重要になります。

このようにMCIの段階、それ以前のプレクリニカル期、もしくは健康な状態から適切な認知症予防や日々の生活習慣の改善を行うことがMCIや認知症の予防につながります。

認知症検査の種類

神経心理検査

神経心理検査は紙やなどを用いて、うつ病などの精神疾患や脳の損傷や認知症などにみられる知能・記憶・言語などの機能障害を数値化して客観的に評価するための検査です。

MMSE(ミニメンタルステート検査)

MMSEはMini-Mental State Examinationの略で、ミニメンタルステート検査とも呼ばれ、認知症のスクリーニングテストとして広く用いられ、短時間で実施できる質問形式のテストです。
全30点満点で、言語機能、計算能力、記憶、図形模写、文章書字、時間や場所の認識など、日常的な認知機能を総合的に評価する目的で設計されています。

認知症が示唆される症状を持つ人、日常生活の中での判断力や行動に変化を感じる人が検査の対象となります。

脳画像検査

脳画像検査は、MRI(磁気共鳴画像)、CT(コンピュータ断層撮影)、PET(陽電子放射断層撮影)など、さまざまな医療機器を使用して脳の構造や活動を視覚的に捉える手法を指します。

認知症の診断や認知症の進行評価、脳の萎縮や梗塞の有無など、脳の状態を診断する際に使用されます。

VSRAD (ブイエスラド)

VSRADは、Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer's Diseaseの略で、主にアルツハイマー型認知症の診断に用いられるMRIを用いた画像解析技術です。脳の萎縮を詳細に評価し、特に早期のアルツハイマー型認知症の検出に有効とされています。アルツハイマー型認知症では特に海馬と呼ばれる記憶に関連した脳の部位が早期に萎縮するため、VSRADはこの海馬の萎縮を評価することでMCIやアルツハイマー型認知症の早期診断に利用されます。

SPECT(スペクト検査)

SPECTは、Single photon emission computed tomography の略で、生体の機能を観察することを目的に使われ、脳血管障害、心臓病、がんの早期発見に有効とされています。放射性同位元素が結合した薬剤を静脈注射し、体外に放出されるガンマ線をSPECTカメラが捉えて画像化します。この薬剤は脳のさまざまな領域に分布し、MRIやCTではとらえられない早期の脳血流障害を視覚的に評価し脳の機能評価ができるためMCIや認知症の診断に利用されます。また、認知症の種類に特定にも活用されています。

血液検査(MCIスクリーニング検査プラス)

MCIスクリーニング検査プラスは、認知症やMCIにならないようにするための検査です。栄養状態や血管の損傷、炎症などの身体の状態から認知症の前段階といわれるMCIのリスクを評価します。
検査方法は採血一本だけで、ご飯を抜く必要もないので、非常にお手軽な検査です。

認知症は発症の20~30年前、いわゆる中年期からの生活習慣が大きく影響します。
MCIスクリーニング検査プラスは、40歳以上の方におすすめの検査です。

MCIスクリーニング検査プラスについてのコラム記事もありますので、あわせてチェックしてみてください。
https://www.dock-tokyo.jp/results/dementia/mci.html

認知症検査を受けるときの注意点と心がまえ

認知症検査を受ける際には、心理的、社会的な準備が必要です。検査に向けた適切な心構えは、診断後の対応をスムーズにし、精神的な負担を軽減するためにも重要です。
認知症検査を受けることは、自分自身や家族にとって大きな一歩です。心の準備を整え、サポートシステムを確立することで、このプロセスをより前向きに乗り越えることができるでしょう。認知症の診断は人生の終わりを意味するものではなく、適切なサポートとケアによって、質の高い生活を続けるためのスタートラインです。
以下に、検査を受けるときの注意点と心がまえについて記載していきます。

心の準備をする

認知症の検査を受けることは、自身の健康状態を直視する勇気が必要です。結果に対する恐れや不安は自然な反応ですが、この一歩が今後の生活の質を向上させるための重要なステップであると理解することが大切です。ポジティブな心持ちで、検査を受ける意義を自分自身に確認しましょう。

家族に話を聞いてもらう

家族や親しい人とのコミュニケーションは、精神的なサポートを得る上で非常に重要です。検査に対する不安や期待をオープンに話し合うことで、心の負担を軽減し、サポートシステムを構築できます。また、家族が検査のプロセスや可能性のある結果について理解を深めることも、検査後の計画を立てる上で役立ちます。

セカンドオピニオンも視野に入れる

検査結果や診断に疑問を感じた場合、セカンドオピニオンを求めることも一つの選択肢です。異なる医療専門家の意見を聞くことで、診断に対する確信を得られることがあります。また、治療方針やケアプランについても、より幅広い選択肢を検討する機会になります。

自分に合った検査の選び方

私たちの身体は、日常のさまざまなシグナルを通じてその状態を伝えてきます。特に脳は身体の司令塔として、その健康状態が全身に影響を及ぼすことがあります。そのため、適切な認知症検査を選ぶことが、健康を維持し、問題を早期に発見する鍵となります。

症状や状況に応じて選ぶ

すでに認知症の疑いがある方は、専門の医師に相談するのが良いでしょう。
医師の診断のもと、神経心理検査や脳画像検査などの認知症の検査が行われると考えられます。

加齢による物忘れが気になる方、認知症予防のための検査を行いたい方は、MCIスクリーニング検査プラスがおすすめです。
MCIスクリーニング検査プラスは、MMSEやVSRAD、SPECT、脳画像検査とは違い、認知症を診断するための検査ではありません。
軽度認知障害(MCI)のリスクを測定する検査になりますので、症状のない40代の方から検査を受けることができます。

今現状、認知症の症状は出ていないけど「将来、認知症にはなりたくない!」と思っている方は、MCIスクリーニング検査プラスを受けて、認知症予防をはじめてみませんか。

検査の選び方

日常の物忘れと認知症の違い

医師との相談の重要性

認知症検査は多岐にわたり、それぞれの検査には特徴や目的があります。そのため、自身の症状や懸念を正確に伝え、医師と十分なコミュニケーションをとることが非常に重要です。
どの検査が良いか悩んだ際は、医師の指示を仰ぐようにしましょう。

MCIスクリーニング検査プラスを受ける方法と注意点

「MCIスクリーニング検査プラスを受けたい!」と思ったけど、どこで受ければ良いかわからない方もいらっしゃるかと思います。
ここでは、MCIスクリーニング検査プラスの受診方法と注意点について説明します。

予約と受診準備

人間ドックのオプション検査としてご受診いただけます。

【検査方法】

1.電話・WEB予約にて追加可能
2.当院で少量の採血
3.その他の検査結果と合わせて結果をご返却

料金 24,200円(税込)

MCIスクリーニング検査プラスの注意点

当検査は既に認知症の方は受診対象外です。
また、「急性炎症・肝硬変・先天的脂質異常症の方、自己免疫性疾患をお持ちの方」は判定結果に影響する可能性がございます。


<検査に関する注意点>

※既に認知症と診断されている方は検査対象外となります。
※急性炎症・肝硬変・先天的脂質異常症の方、自己免疫性疾患をお持ちの方は判定結果が影響を受ける可能性がございます。
※本検査は食事の影響を受けません。

MCIスクリーニング検査プラスの受け止め方と気を付けること

「MCIスクリーニング検査プラスを受けてみたいけど高リスクが出たらどうしよう…」と心配になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ですが、「MCIスクリーニング検査プラスの高リスク = 認知症」ではありません。

結果の解釈と説明の受け取り方

MCIスクリーニング検査プラスは、認知症かどうかを判別する検査ではなく、MCIのリスクを知る検査です。
高リスクの方は、今の生活習慣を続けてしまうと、将来、MCIや認知症になってしまう可能性が高いという意味になります。
結果が悪かった場合でも、予防の取り組みにより認知症の発症を遅らせることができます。

検査後の認知症予防の重要性

MCIスクリーニング検査プラスは検査後の予防コンテンツも充実しています!
検査を受診した方全員に無料でお渡ししている「認知症予防マニュアル」や運動の動画や予防のレシピなどが載っているWebサイトの「認知症予防習慣」を見て認知症の予防に取り組んでいただけます!
仮に、結果が高リスクだとしても適切な予防を行うことでMCIのリスクを下げられる可能性があります。
検査後は、MCIや認知症にならないためにしっかりと予防に取り組んでいただくことがとても大切になります。


【参考文献】

検査結果や診断に疑問を感じた場合、セカンドオピニオンを求めることも一つの選択肢です。異なる医療専門家の意見を聞くことで、診断に対する確信を得られることがあります。また、治療方針やケアプランについても、より幅広い選択肢を検討する機会になります。

1) 政策レポート(認知症を理解する)
https://www.mhlw.go.jp/seisaku/19.html

2) 健康長寿ネット 認知症
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/index.html

3) Conversion and Reversion Rates in Japanese Older People With Mild Cognitive Impairment. JAMDA, 18(2017)808.e1–808.e6

ページトップへもどる