がん関連コラム Vol.2 「尿のがんリスク検査、マイシグナルの精度って?」

尿を取るだけで、全身10部位のがんリスクがわかる画期的な時代に
尿をコップに取るだけで、膵臓や肺、卵巣まで含む10種類のがんリスクが分かる。そんな革新的な検査が技術の進歩によって登場しました。
前回の記事で、がんリスク検査を選ぶ際のポイントをお伝えしましたが、今回はその中でも健診会が導入した最新検査「マイシグナル・スキャン」に焦点を当て、その精度を医学的な観点で解説します。
マイシグナル・スキャンとは何か?
マイシグナル・スキャンは、尿中に含まれるマイクロRNAを網羅的に解析し、膵臓、肺、胃、大腸、食道、膀胱、腎臓、前立腺、乳房、卵巣の10部位のがんリスクを個別に評価できる画期的な検査です。
採血すら不要で、尿を採取するだけという手軽さは、まさに技術革新の成果と言えるでしょう。
マイクロRNAとは何か?
マイクロRNAとは、遺伝子のスイッチを調整する小さな分子です。
がん細胞では、真っ先にこのスイッチが乱れ、正常細胞とは異なるマイクロRNAの量や種類が現れます。
このため、がんがまだ形になる前の初期段階の異常を早期に捉えることが可能であり、「マイクロRNAの発見」が2024年にノーベル生理学・医学賞の受賞テーマになった理由でもあります。
しかし、陽性者にはすぐに 大腸内視鏡や大腸CTなど精密検査を行い、本当にがんがあるかどうかを確かめられるため、偽陽性があっても大きな問題にはなりません。
このように スクリーニング検査では「見逃さない=感度の高さ」が最も重要で、特異度は後続の詳しい検査で補えばよい、という考え方が一般的です。
驚異の早期すい臓がん感度 92.9%
すい臓がんは「沈黙の臓器」とも呼ばれ、症状が出る頃にはすでに進行していることが多い病気です。
しかし、マイシグナル・スキャンは、国立がん研究センターや慶應義塾大学と連携し、4年をかけて収集した早期すい臓がん153症例を解析。
その結果、早期ステージ(Ⅰ・ⅡA)の検出感度92.9%、特異度も92.9%という高い精度を達成しました。
これらの成果は、世界的に権威ある医学誌『The Lancet』の姉妹誌『eClinicalMedicine』にも掲載されています。
従来の腫瘍マーカーCA19-9の感度が37.5%であることを考えれば、この精度がどれほど画期的か理解できるでしょう。
肺がんでも早期発見に優れた性能
すい臓がんだけでなく、肺がんの研究でも優れた結果が報告されています。
慈恵医科大学と東大阪医療センターが共同で行った研究では、肺がん全体の検出性能としてAUCが0.95、感度88.6%、特異度87.1%を記録しました。
特に、ステージ0やⅠのような非常に早い段階でも高い感度を発揮していることは注目すべきポイントです。
毎年の胸部CT検査の負担を考えると、手軽な採尿だけで早期発見が可能になるメリットは非常に大きいでしょう。
実際の臨床現場での有効性を実証
高い精度が研究段階だけの結果ではなく、実社会で実際に役立つことも実証されています。
マイシグナル・スキャンの開発元であるCraifは、北海道の自治体や病院、北海道大学と協力し、地域住民100名を対象にマイシグナル・スキャンを実施。
その後の精密検査まで追跡する前向き臨床研究を行いました。
その結果、従来の検査では見つけにくいステージ0の肺がんを早期に発見し、治療に成功しています。
この成果は第42回日本呼吸器外科学会でも発表されており、マイシグナルの精度が机上のものではなく、実社会で有効であることを示しています。
健診会がマイシグナルを採用した理由
健診会が新しい検査を採用する際には、その科学的妥当性と品質管理体制を重視しています。
マイシグナル・スキャンは早期がん検出に関する高い精度が報告されていることに加え、厚生労働省の基準を満たした「衛生検査所」で検査が行われるなど、品質管理の面でも安心できる体制が整っています。
早期発見の可能性を大きく広げる検査
現在のがん検診の課題は、小さいうちのがんを捕まえることが難しい点と、受診率の低さにあります。
その壁を突破する可能性を秘めているのが、尿検査のみでがんのリスクを評価できるマイシグナル・スキャンです。
私たち医療スタッフとしても、膵臓や肺のように早期発見が難しい部位での高い精度には大きな期待を寄せています。
健診会では、前回の記事でご紹介したスクリーニングの4つの重要なポイント(早期がんの検出感度、部位特定、科学的妥当性、品質管理)を満たす検査として、マイシグナル・スキャンをオプション検査として提供しています。
「忙しくて時間のかかる検査が難しい」「採血が苦手」という方にも最適な、未来の健康を守る新しい選択肢です。
ぜひ一度、健診会でご相談ください。








