大腸がんコラム Vol.1「便潜血検査について」 健診会 東京メディカルクリニック

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大腸がんコラム Vol.1「便潜血検査について」

当院で行った337名を対象に行った大腸がんに関するアンケートでは、約半数の方が「症状はないけどがんが心配」と回答し、5人に1人が「(本人または家族が)健診で便潜血検査で陽性になって不安を感じたことがある」と回答しています。

大腸がんに関するアンケート

しかしそのあと「大腸内視鏡などの精密検査を受けた(受けさせた)」と回答した方は 42.7%、「内科を受診した(させた)」と回答した方は 2.4 %に留まっており、「何もせず様子を見た」と回答した方は 37%もいらっしゃいました。
実際、便潜血検査で陽性になったら、何をしたらいいのでしょうか?
今回は便潜血検査の理解が深まり、次回からの行動に繋がるよう

  • 便潜血検査とは
  • 陽性になったらどうしたらいいか
  • 痔=便潜血陽性ではない
  • 便潜血陰性の意味と注意点

などについて説明していきます。
ぜひ最後まで読んで便潜血検査について理解を深めてください。

便潜血検査とは?

便潜血検査は健康診断での大腸がん検診として広く普及しており、2日ぶんの便をスティックで採取して提出するだけの食事制限なども必要ない非侵襲的で簡便な検査です。

図 便潜血検査キット

図 便潜血検査キット

大腸がんは早期の場合は比較的症状が出にくいとされていますが、進行すると便に血が混じるといった症状が出るとされています。便潜血検査は目に見えないような微小な出血でも検出することができます。
通常、食物が便として排泄される課程で便に血が混じることはありませんので、この検査でひっかかった方、陽性と判定された方は「大腸がんの可能性がある」ため、消化器内科への受診が必要ということになります。2日法で、2回中「1回だけ陽性」の方も、消化器内科への受診が必要です。
ちなみに陽性になったときに再度便潜血検査を受けるというのは意味がありません。

便潜血検査で大腸がんはわかるか?

図 大腸内視鏡検査

図 大腸内視鏡検査

便潜血検査だけでは大腸がんかどうかはわかりません。
日本対がん協会が2020年度に全国の支部で行った大腸がん検診(便潜血検査)の結果では、なんの症状もない受診者219万9623人のうち、大腸がん検診を受けて陽性になり、精密検査を受けた方の中でがんを発見された人の数は3246人、がんの発見率は0.15%でした。
つまり便潜血検査で陽性となったからといって必ずしも【大腸がん】だというわけではありません。
大腸がんを確定的に診断するために行う検査には大腸内視鏡検査があります。
経済的で手軽に受診できる便潜血検査で選別を行い、より有病率が高い方から大腸内視鏡検査を受けていただくことで、効率的に大腸がんを見つけることが出来るとされています。
大腸内視鏡検査は、受けることで大腸がんの95%以上1)を見つけることができると言われていますが、大腸内視鏡検査は、費用がかかり身体的なリスクもあることから、健康診断としてすべての人に実施するのは難しいです。
また大腸内視鏡検査へのマイナスなイメージから受診を控えてしまう方も一定数いると言われています。そこで前処置負担や検査の拘束時間も短く、大腸内視鏡検査と同等の検査精度で検査を行える大腸CT検査が近年注目されています。

痔だと便潜血検査はどうなる?

日本人は3人に1人程度が痔の既往があり、70%程度の人が痔について悩んだことがあると言われているくらい身近な病気ですが、便潜血検査は痔や生理が原因で陽性反応が出てしまうことがあります。
切れ痔の場合、30%の方が便潜血検査で陽性となってしまうという調査結果もあります。症状があるときや、その直後は偽陽性となりやすくなるため、その期間は避けることをお勧めします。
しかし便潜血検査が陽性になったにも関わらず、過去に痔の既往があるからといって多分痔だろうと安易に自己判断してしまうと、精密検査の機会を逃してしまいます。
便潜血検査が陽性になった際には痔の既往があっても、その都度医師に相談をしましょう。

便潜血検査が陰性といわれたら?

便潜血検査が陰性となった方の中でも数千人に一人程度大腸がんが見つかると言われています。
残念ながらすべての大腸がんが便潜血検査で見つかるわけではなく、便潜血で陰性というのは、あくまで2日とも便に血が混ざっていなかったということでしかありません。
便潜血が陰性でも、便秘や下痢が続く、便が細い、腹痛などがある場合は大腸内視鏡検査などの精密検査を実施したほうがよい場合もあります。

便潜血検査は不要?

便潜血検査の病変検出精度は、進行大腸がんへの感度が1日法で73.3%、2日法で85.6%2)といわれており、内視鏡検査等の精密検査に比べると劣ります。しかも前駆病変と言われる大腸ポリープや早期がんでは更に感度は低くなるといわれています。
便潜血検査は早期がんであろうと進行がんであろうと、大多数の中からがんの可能性が高い人を引っかけるための検査であり、陽性になった時に早期がんではなく進行がんである可能性がある検査です。そのため大腸がんの早期発見のためには便潜血検査は不要だという意見もあります。
しかし上記でも述べたように大腸がんを確定的に診断できる大腸内視鏡検査は、費用がかかり身体的なリスクもあることや、技術を身に着けた医師だけが実施可能で一日に数名しか検査できないことなどから、健康診断としてすべての人に実施するのは現実的ではありません。
便潜血検査の1回の検査感度は高くはありませんが、一定期間に繰り返し検査を受け続ければ、検診としての効果は累積されていくことになり、ある程度の感度でがんを拾い上げることができるようになります。大腸がんの場合の前臨床期(がんになるまでにかかる時間)は約7年と推定されており3)、他のがんに比べると比較的長いため、その間に繰り返し検診を受けることで精度高く大腸がんを発見することが可能となります。便潜血検査は毎年繰り返し受診するようお勧めします。
とはいえ大腸がんを早期発見するために、便潜血検査だけだと不安という方には個人で人間ドックを受診するという選択肢もあります。
当院の人間ドックでは内視鏡検査に比べて前処置が比較的簡便で検査時間も短い大腸CT検査をお勧めしています。

特に「今症状はないけれど、将来大腸がんになるのが不安」という方は、精神的・身体的にも負担の少ない大腸CT検査を是非ご検討ください。

大腸CT検査について詳しく知りたい方は

1) がん情報サービス「大腸がん検診」
2) Provenzale D, Jasperson K, Ahnen DJ, et al. Colorectal Cancer Screening, Version 1.2015. Journal of the National Comprehensive Cancer Network 2015; 13: 959-968. quiz 68.
3) 斎藤 博 , 土田成紀 , 柿崎良輔 , 他 . 逆受身血球凝集法による大腸癌集団検診のための免疫学的便潜血試験 . 日消誌 1984; 81: 2831.

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